Q太第1句集 『 Q1 』


2004年(平成16年)1月に俳句を始めたので、2010年末で丸7年になる。
この7年間の駄句の中から少し増しなモノを集めて「Q太第1句集」を編集してみた。


【2004年】

 日向ぼこ猫目瞑りてソクラテス

 爪切草兵士の墓の小さかり

 天領の檜の上の鰯雲

 小春日の抜糸の肉の快楽かな


【2005年】

 葦焼の炎大河を渡り来む   

 野火を見し雉の眼の万華鏡    

 葬の音くぐもれり春の雲
 湖面までさくら延びきて乱反射 

 鯉のぼり初めは皺のよりしまま  

 真夜中の種まで赤き山桜桃   

 二百十日少年柵をけとばしぬ

 落ち合ふは理学部前の時計草

 天袋開いてをりぬ冬支度

 棒鱈の顔に目
玉なかりけり


【2006年】
 窯出しの貫入の音山眠る  

 白鳥の顔に羽毛の生えてゐし
 切干を水に浸すは偽善なり   究極の切干大根

 彼の国を旅せしときの桜貝  サムネイル

 風薫る公会堂のオムライス

 日盛の電線の影踏み行かむ

 秋立つや射的の銃の軽かりし

 真二つに切られし鮭の丸き骨

 少年の唇朱し神無月

 冬ざれや纏はりつきし獣の毛


【2007年】
 臘梅の夜明けのごとく咲きにけり  

 木枯に耐へたる月の歪みけり

 かはほりのぶつかりきたる獣臭

 河童忌や透明の水流れをり
 流木の着きたる岸の曼珠沙華     

 秋麗やくるりと回る鉋屑

 木の股のその上の股はつもみぢ

 真夜中のレモンの上の太きジャズ


【2008年】
 神鶏の生みし玉子や年の酒  

 読初に真中の頁開くかな
 早春の小鼓の紐しぼり上ぐ  小鼓

 馬の尾の白詰草に届きをり  

 陽炎のその真ん中に鍵落とす
 勘定の足りて噴水吹き上がる  

 銃口の中の暗やみ半夏生
 前景はやがて後景おほはなび   打ち上げ花火

 蟷螂の爪本殿に届きけり

 彼もまたはみ出してをり百日紅

 野放図は括つてしまへ萩の花

 ぎこちなく海鼠面目保ちをり


【2010年】

 どんどの焔空手の蹴りのその先に  

 鍵盤の左手迅し春一番

 いきなりのトロンボーンや春の闇

 おぼろ夜の車軸の油汚れかな

 風紋に遊びし頃の遅日かな

 葉桜の口縄坂をのぼりけり

 乱鶯は茶碗を洗ふ音の中

 いろは赤大きさは中バラ盛る

 蓴舟真白き雲に棹さして

 塗り立ての千本鳥居ところてん
 野いちごの錆びたる赤や兵の墓     

 どう見てもB型ならむ鶏頭花

 コンパスのがにまたのあし夜の秋

 空腹の魚の泳ぐ空は秋

 家中の時計を合はす厄日かな

 木曾谷の山気吸ひたる夜這星

 噛みて歯に青く拡がる林檎かな

 襟足をどこまで見せる冬に入る

 だるま屋のだるまを抱く小春かな

 茶が咲いて舟徳利の大きさよ  サムネイル

 銭箱を積み上げし蔵たまご酒  サムネイル

 手袋に苦労知らずの手を秘めて

 白鳥のきしきしきしと飛びゆけり