Q太の思い出句集   1997〜2003年】

   
俳句のことを何も知らずに、五七五と指折りながら、昔のことを思い出しながら、
    ともかく作ってみた。捨てるのも勿体ないので、思い出の記録として留めおく。


   竹生島カヌー初漕ぎ初詣 98  

    初漕ぎの水面も透けし奥琵琶湖 98

   更年期あけて鈴振る初詣 03   


   叡山に入日残りて冬の湖 98 


    日向ぼこ猫目瞑りてソクラテス 97

           湯どうふやあんたは別嬪世界一 97


    ホワイトデー真っ赤な薔薇を贈ろうか 97 

  梅の香の空の青きに吸ひ込まる 02

         次の角曲がれば白梅匂ふやも 01

    菜の花を並べて遊ぶ川堤 01 


     咲き競ひ白木蓮天を指し示す 99

   天辺はシャンパングラス白木蓮 01  

     ふくよかに背割の桜湾曲す 01


         昼休み超高層に風光る 01

             三輪車春の光を駆け行けり 01

                 川堤手を振る児等に春夕焼け 01

         風光る芝生に乙女舞ひにけり 01
    


    テープから般若心経春の昼 00

       春昼や大中小の三地蔵 01  

         寝転びて土手の匂ひや春の昼 01

            見たきもの童の時の春の夢 98

               すかんぽを銜へし空に雲一つ 01

     琵琶湖漕ぐ暮春の水の柔らかき 99 

        葛城の全山芽吹く雨上がり 97

    燕舞ひ銀鱗はねる紀伊の海 97  


       石跳んで夏めく川の鬼ごっこ 02

  鯉のぼり訪ねキャンプのもらい水 97

    風の音みどりの音に水の音 03  


   アーチ橋隠してしまふ新樹かな 01

   大いなる新樹の立てる渡し跡 01  


    屋久島の岩に木が生え緑濃し 97

     知床の万緑映すオホーツク 96  


      白鷺の群れ来て田植見守れり 01

     茶を飲めば植田に映る山の影 02  

          夏ツバメ田圃に走る影速し 03

  乙女らはひょいと茅の輪をくぐりけり 01 


 荒梅雨の餘部わたる汽笛かな 98  

      梅雨晴間濁りて太き源氏滝 01  


    カヌー漕ぐ琵琶湖半分空半分 97

   我カヌー日本海の紅一点 98  


   カヌー漕ぐ晴天大波日本海 97 


   一人漕ぐ夏大空のオホーツク 96  


            空青し滝千年の巌を噛む 00

      寝転びて雲とたわむる青田風 99

         枇杷の実を枇杷の闇よりもぎとりぬ 98

   オホーツク海いっぱいに夕焼けて 96  


       黒潮の裂ける白波翡翠色 97 


   星祭り大人びて見ゆ子らの顔 01  


        蝕の月赤く残りて秋来たる 00

      畦道の枝豆の花紅一点 03 


    赤蜻蛉とまりて細き唐辛子 00


    月光を全反射する新瓦 00

        黄金の月出でやがて主となる 00

               有明の月に向かへる鳥の影 00

     秋の夜のグラスにうつる読書の灯 98

         瀬戸内の花野の風の柔らかき 00

              新米の弁当喰らひ日本晴れ 99

                   岩を縫う流れに紅葉溺れをり 03


   吉野窓もみじの燃ゆを刳り抜けり 03 


   露天風呂流るる紅葉摘み上ぐ 03

      野良猫の丸き背中や冬隣 00

         掃き清められし石段今朝の冬 01

            お湯割りを両の掌で持ち冬に入る 01

               新しき歯ブラシおろし今朝の冬 98

                  茶の花や段々畑の夕間暮れ 99

                      醍醐寺の苔に吸われし時雨かな 99

      姿よき落葉拾ひて書に挿む 00  

            コンサート終りて軽き落葉道 97

   小春日の屋久をカヌーで漕ぎ始む 97 

           留守番の白き障子の隙間風 99

              還暦の冬三日月を歩くかな 03

   逆光に阿修羅めきたる枯枝かな 03  

       冬空にケーブル太き斜張橋 02

           寒風にペダルの重し木津の土手 02

  浮御堂冬湖渡る背丸し 04 


        急患の子の叫び声凍りをり 99

     クリスマスツリーのライト迎へくれ 03

        すすはらひ僧帽筋の凝ほぐれ 03

  葉牡丹のおしくら饅頭押し詰まる 99