Q太の思い出句集    【2009年】


【1月】
    ◎ 目瞑れば初日は円く大きかり    

            元日の大樹は天に届きをり

                  さうさうに夫婦揃ひて鍬始         

        買初の種ジャガイモをぶら下げて

             セスナ機の宣伝しをる初戎

                   小正月テンプラ鍋の磨かれて

          銭湯の煙の軽さ松納
              臘梅の玉の蕾をちりばめて    

                  ◎ 成人の日の美容院煌々と


【2月】

      流木の根刮ぎのあり冬日向

            獣毛のごとく木椅子に霜立ちて

                  立春や天麩羅あげる音高く

       立春の川の流れの円やかさ

             どら声は深夜の猫の恋ならむ

                   つちふるや風呂屋の煙突墓碑にして

        遺伝子や春一番に起さるる

              草萌の真中に影伸ぶ時計塔

                    下萌に小さき轍つけながら

          川上へ向かふさざなみ春の風


【3月】

    陽炎を割りて出でくる女かな

         春光に折合ひをつけ影動く

               若者は春の包みを積み重ね

      風船の掴まへられし色は赤



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    体調を崩して、9ヶ月の間、句作りができなかった。

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【12月】

     影までも紅葉色なり照紅葉

          一升の瓶ごと揺れる新酒かな

               古妻の遊び毛あそぶ小春かな

      散紅葉かたまる上に寝そべる子

           十二月登り切つたる坂の上

                深呼吸ゆず湯の柚子をしぼりては

        冬夕焼四周の雲に映りをり

             手袋の先のゆるみの不幸かな

                  おでん屋の女の匂ひオリオン座