木津川の四季

   − 春の部 −

  1景  ふくよかに 背割の桜 湾曲す


     

  木津川と宇治川の合流点付近に築造された両川を仕切る2kmの堤防、「背割堤」の桜は見事である。
  特に、木津川の方の河川敷から眺めると、湾曲した背割堤の全ての桜が一望できる。まさに絶景かな!


  2景  菜の花に 包まれ鉄橋 河渡る

     

     石清水八幡宮を見上げて、御幸橋のたもとから木津川サイクリングロードを走り始める。
     堤防は菜の花盛りだった。京阪電車の鉄橋を越えると、やがて田園風景が広がってくる。



  3景  川堤 菜の花並べ 遊ぶ子や

     

  木津川の流れ橋は素朴な木構造で、周りの茶畑等のどかな田園風景に溶け合っていて、別世界だ。
  一人の少女がその橋のたもとで、堤防で摘んできた菜の花を並べて、菜の花屋さんごっこをしていた。


  4景  玉露畑 黒いベールの 半開き

    

  「玉露」は茶畑を黒いビニール繊維シートで覆い、新芽が堅くならないよう、霜に遭わないよう大事に
  育てられ、覆いの中で手摘みされる。茶摘の終わった区画のシートが開けられ、新緑のいがぐり頭が
  きれいに並んで顔を出し、日光浴をしていた。


  5景  春昼や 大中小の 三地蔵

    
    

    玉水橋を過ぎると、自転車道が堤防の中段を走る区間がある。その堤防中腹に大中小の
    お地蔵様が村の田畑の方を向いて座っておられ、いつも見守っていて下さる。今日も走り
    過ぎてから引き返し、お参りした。


     お地蔵様のお陰で、NEC C&Cユーザー会のフォトコンテストで佳作を頂きました。 



   − 夏の部 −

  1景   大いなる 新樹の立てる 渡し跡

     

   木津川自転車道にはいくつかの渡し場跡がある。近鉄鉄橋南側の堤防上に「富野渡し場跡」の
   標示があった。後ろには往時の目印であったろうエノキの老大木(写真に見えるのは上半分)が
   茂り、ゆっくりとそよいでいた。



  2景  蜜蜂の 木津の彼岸に 飛び行かむ

     

   自転車道の中程の堤防下に養蜂箱が置かれていて、1箱に4万匹、計60万匹もの蜜蜂が
   住んでいる。彼らは木津川を越えて、遠く対岸の花まで飛んで行く。巣箱の中には、9ヶ×
   3段=27ヶの巣があり、それを丸ごと遠心分離器にかけて蜜を抽出するそうだ。


  3景   自転車を 止めて桑の実 二三粒

       

   木津川ロードも終盤に近づいた。相楽郡の河川敷を軽快に走っていると、バイクを止めて何やら
   採っている人がいる。聞くと近所の方で、桑の実だと言う。黒紫の熟した実を頬張ると甘かった。
   昔は葉っぱが蚕の餌になったであろうが、今は実を採る人もめったにいない。



  4景   白鷺の 群れ来て見守る 田植あり

        

   玉露の丘「飯岡」では茶摘みが終わると休む間もなく田植えだ。淀川から水が引かれると一斉に、
   耕耘機が田を耕し、田植機が早苗の束を積んで高速に植えていく。白鷺は、茶摘み歌が耕耘機の
   運転音に変わっても、昔と同じようにやって来て、見守ってくれる。



  5景   緑陰に サイクル止めて 地図眺む

   近鉄鉄橋のすぐ手前に藤棚があり、花の時期が過ぎると緑がこんもりと茂ってくれる。
   バイクを緑陰に入れて休ませ、私はスポーツドリンクで喉を潤す。
   やおら地図を引き出して、この暑さの中どこへ行こうか思案する。








   − 冬の部 −




  2景   寒風にペダルの重し木津の土手
     

   北西の季節風に逆らって、誰もいない木津川の土手を走るのも、たまにはイイものだ。
   八幡に着くとホッとする。