冬琵琶湖四景


1景 初漕ぎの水面の透けし奥琵琶湖

毎年、カヌー初漕ぎはソロで琵琶湖と決めている。湖の最北、奥琵琶湖の冬は格別である。
長浜を出艇し菅浦に向かう途中、竹生島のすぐ北あたりで、小雨は上がり風も止んだ。
夕暮れ時の湖面が鏡のように静かになった。
人造物は何一つなく、北欧の湖を漕いでいるような錯覚を覚えた。


2景 雪琵琶湖エリの林立比良に向く

昨日は近江八幡の迷路のような水郷を漕ぎ巡り、その冬景色を堪能した。
夕刻、琵琶湖大橋近くのリゾートホテルに着艇。翌朝、目覚めると雪であった。
赤いカヌーに積もった雪を払い落として、正面のエリに向かって漕ぎ始める。
背景には、雪化粧の比良山脈が屏風のように連なっていた。



3景 浮御堂冬湖渡る背丸し

冬の琵琶湖ではバス釣り以外に人影を見ることはまずない。
ただ1カ所、湖水に突き出た堅田の浮御堂にはいつも、お参りする人がいる。
人懐かしさからか自然にパドルに力が入る。
この日は3人ほどの人影が見えたが、あまりの寒さに足早に消えてしまった。


4景 叡山に入日残りて冬の湖

曇り空の日暮れが近い。早く漕がねばと少し焦るが、夕景色はどんどん変化していく。
目が離せない。
比叡山の上のわずかな雲間から最後の日が射し込み、素晴らしい夕焼け空、夕焼け湖になった。
カメラを構えシャッターを押している間に、やがて日は沈んでしまった。
ゆっくりと暗闇の中を漕ぎ出した。