南琵琶湖の初漕ぎ


1997年1月の大寒前の土曜日、近江舞子の白砂青松を12時前に出艇した。

まずは東南東10km先に見える琵琶湖で最大の島、沖島に向かった。

途中で振り返ると、比良は吹雪いていた。(下3枚の写真の左)

沖島の南側をぐるっと回り込み、港に入る。正面に近江八幡市消防団の立派な艇庫が見える。
この島では消防自動車は走れない。どこの火事でも消防艇で消せるのだ。(中央の写真、舳先方向に消防艇)

遠慮がちに奥のスロープに艇を止めた。(右写真)
焼酎で暖をとり、チキンラーメンを喰らう。
島の散策もそこそこに時間の関係もあって、南西15km地点にある琵琶湖大橋北東のリゾートホテルまでの間を直線コースで漕ぐことにした。




本日の天候は曇りで、近江舞子では無風状態であったが、沖島に近づくと北西の風が出てきて波高1m。
沖島を出てマイアミ浜に近づくと南西の風に変わり、逆風となる。
ここできれいな夕焼け空に見とれて暫し時間を費やす。(右写真)

日没後の波高1〜1.5mの波に向かって漕ぎ進め、勝手知ったる目的地の砂浜に18時過ぎ無事着艇。
真っ暗であった。




翌日も曇り。
比良をバックに艇を整え、11時前に出艇。琵琶湖大橋の北側で湖西に渡る。



今堅田の岬の先端で見つけた木造の「出島の灯台」に立ち寄り、年季の入った梯子を登ってきた。(左下写真)


いつものように、「唐崎の松」の南西の小さな浜に艇を着けて唐崎神社にお参りする。(右写真)


神前のだんご屋(本邦御手洗団子発祥の地と書いてある)の女将さんをベルで呼び出し、だんごを5串焼いてもらう。
湖面の台船に神輿が7基載っている写真があり、尋ねると、日吉大社の神輿で、毎年4月14日の山王祭の船渡御では、日吉大社の摂社である唐崎神社の前までやってくるそうだ。
昔は上陸していたが今は上がれる浜がないので、引き返し、比叡辻で上陸するとのこと。
そういう由緒ある神社とは知らず失礼しました。
(2000年11月にフォールディング・バイクで女房と日吉大社にお参りした時に、神輿の実物を見ることができた。)







 
さざなみの志賀の唐崎さきくあれど 大宮人の船まちかねつ
 
                            柿本 人麻呂


 
唐崎の松は扇の要にて 漕ぎゆく船は墨絵なりけり
 
                            紀 貫之


 
唐崎の 松は花より 朧にて            松尾 芭蕉




唐崎の松から漕ぎ進めると、すぐに松林に囲まれたいつも芝生の手入れの行き届いた広い敷地があり、艇庫まで付いている。
これも団子屋の女将さんから聞いた話だが、さるお方の別荘だったそうだ。
昔、琵琶湖のここら辺りの市街地開発が進む以前には、こういう立派な別荘がいくつもあったのだろう。南琵琶湖で私の一番好きなスポットである。

振り返り振り返り琵琶湖の風情を味わった後、超高層の大津プリンスホテルを目標にひたすら漕いだ。

近江大橋をくぐって瀬田川に入る。JR、国道に続いて、瀬田の唐橋、新幹線、名神をくぐって、京阪石山駅前の公園に着艇したのは、17時前。5ヶ月ぶりのカヌーを堪能した。




      初漕ぎは 比叡颪を背に受けて

        冬陽出で 眩しき小波 漕ぎ進む

          白鳥か 連凧のごと比良へ飛び


                 鴨 カヌー見て 潜り やがて首出す

                   冬曇り 大津プリンス 木偶の坊

                      初漕ぎを 近江の大湖で満喫す


 【出島の灯台】






memo【近江八景】
中国の瀟湘八景にならって室町時代に定められた。
石山の秋月、瀬田の夕照、粟津の晴嵐、八橋の帰帆、三井の晩鐘、唐崎の夜雨、堅田の落雁、比良の暮雪。