山陰海岸ショート絵巻 巻1       浜坂→余部


1998年6月。クラブ・ザ・ファルトの例会に備え、前日の夜遅く浜坂の民宿に着いた。
既に、クラブ主宰の吉田先生から例会は強風警報が出たので中止・延期する旨の連絡が宿に入っていたが、温泉に浸かり、それならば例会プランと反対方向の東に漕ぎ出そうと考えた。
翌朝、小雨降る中、10時半頃に浜坂の東端のビーチを出艇。
海から見る浜坂の街は、後に山を控え、なかなか落ち着いた風情だ。

   

浜坂の東の岬を回り込んで東に向かう。
西を振り返ると、浜坂港の向こうに山から岬が延びている(下左写真)。 
前方東には、三尾の大島が見えている(右写真)。

               

三尾の漁港に着艇して、チキンラーメンを食っていると、この港の主のような漁船が帰港した。
ジッちゃんがカアちゃんに指図しながら、私の目の前でてきぱきと漁船をスロープの一番上まで引き上げた。
私が香住に向かうと知り、エンジン付きの船でも帰ってきたのだ、東は無理だ、浜坂へ戻れと言う。
私は暫し休憩の後、ゆっくりと出港した。

                  

鉛色の海に出て少しは躊躇したが、親切なアドバイスを無視して進路を東にとった。
小雨の山陰海岸 ソロ・パドリングを楽しんだ。
下の写真は、三尾松島の鋸崎だ。
この時は少し雨も止んで、緑がきれいだった。

                  

ところが、伊笹岬を回り込むと、強烈な南風が余部方向から吹いてきた。
今までは陸の陰になっていたが、岬を回って陰が無くなったのだ。
漕げども漕げども、伊笹岬の灯台(の出先の灯)は右舷前方の状態が多分30分ほど続いた。
ともかく沖に流されないように漕ぎ続けていると、急に風が無くなった。
余部の陸に少し近づいて風の陰に入ったようだ。無風状態の海をゆっくりと漕いで無事、着艇。
下の写真は、伊笹岬をようやく回り込んだ時に、振り返って撮ったもの。
カメラの蓋が開いたのか海水が入り、赤く変色しているが、雰囲気は出ている。

                 

その夜は荒梅雨の余部に宿をとり、翌朝もう1度小雨の中、あの伊笹岬灯台の近くまでこわごわ漕いで行った。
                           

           


                  荒梅雨の 餘部わたる 汽笛かな