南紀ショート絵巻 巻3  見老津→白浜→千里浜(失敗)

                                                   (1本目のフィルムは海水に一晩浸かり、変色してます。スミマセン!)

見老津〜周参見〜日置大浜(泊)〜才野〜白浜(テント泊)〜目津崎〜千里浜 (1997/4)

【1日目】

JR見老津駅で下車。
駅は無人だが、魚がいる。
この辺りの海の魚が水槽で泳いでいるのだ。
水を補給し、国道を横切って、ゴロゴロ石が広く続く浜に降りる。
何にもない石の浜だったが、幸い海は凪いでいて、15時頃、ゆっくりとスムーズに出艇。
右写真は沖から見た見老津の浜。


陸の黒島、沖の黒島のトコロは、外側(海側)を進めばよかったのだが、時間を稼ぎたく、内側に漕ぎ入れた。
うまく行きそうだったが、合掌波とか夫婦波とか呼ばれる中央部の波の動きは複雑で翻弄された。
岩礁に乗り上げそうになりパドルで岩を押す。
危うくハルを破るところだったが、運良く脱出できた。
デッキ上にショックコードで止めていた愛用の水袋(3L)が見事に波にさらわれて行方不明。
左写真は、通過後、安全圏で振り返って写す。

海に沈んでいく夕陽の美しさに見とれて小1時間波間に漂っていた。
18:30を過ぎてから慌てて日置大浜の西端に立つ国民宿舎の方向に向かって漕ぎ出した。

国民宿舎の食堂のおばちゃんに頼んで、遅い夕食に出た干物を明日の食料用に分けてもらい、ついでに水袋の代用品に一升瓶をもらった。


【2日目

国民宿舎を9時過ぎに出る。
椿温泉の小浜で、11時頃、上陸・休憩。
その後、凪いでいたので、磯の間を漕ぎ進めたりしながら、私の好きな才野に向かう。


      国民宿舎は浜からすぐだ                 磯を漕ぎ進める
      


才野は、今日も暖かく迎えてくれた。

 

ゆっくり昼食をとった後、空になった一升瓶を持って、水をもらいに出掛けた。
鯉のぼりが見える。その方向に行くと、子供達が三輪車に乗って遊んでいた。
家の前でおばあさんがタマネギをむしろに広げて干していた。
その天ネギを1つ今晩のかぶりつきサラダ用に分けてもらい、庭に水道栓が見えたので、水ももらった。
4、5人の子供のうち直樹くんが浜まで付いてきたので、カヌーに乗せてやった。
2年後ぐらいかな下右の自分がカヌーに乗っている写真を自分のアルバムで見て、手紙をくれた。
小学校1年生になったと書いてあった。


 



白浜の観光名所の三段壁が近づいてきた。

熊野水軍の舟隠しの洞窟がいくつもある。                     一番大きな洞窟には、三段壁の上(右端写真の中央の建物)からエレベータが付いている。
   



湯崎半島の突端の露天風呂「崎の湯」に今回も入った。
汗を流して磯伝いに帰ってくると、潮が引いていて、パドルを岩の隙間に入れてバウラインをもやってあった艇は磯の岩の上に上がっていた。
温泉の後は、途中でビール上陸した後、テントサイトに向かう。

   湯崎の磯に上がった愛艇            テントサイトは、眼鏡岩の左の眼の向こうである。(山の上の建物は南方熊楠記念館)
         


空模様が怪しいので、テントはアーチトンネルの下に張った。
ここは大屋根付きなので、雨でも衣類を乾かせて、便利である。

盛大な焚き火に火を点ける。

アーチの向こうに見えるのは塔島である。

夜遅くアメリカ人の若い男女がやって来て、近くにテントを張った。
大阪・梅田で英会話教室の講師をしているそうな。女の方は片言の日本語が少しできる。
仕事が終わってからJRでやって来たのだろう。
焚き火を見つけてココに来たと言ったが、駅からも遠いし土地勘がなければ無理で、多分、初めてではないだろう。
それにしても、カップルが夜更けにテントを持ってこんなところまで来るとは、びっくりする。日本人の感覚では考えられない。


【3日目】

朝起きると、二人は小さなテントで寝ていた。
先にガールが起きてきて、カヌーを見つけて喜んだ。
昨夜は暗くて見えなかったのだ。
実は自分もいつか姉さんとカリフォルニア湾内をズーッと海岸線に沿ってカヌーで旅をしたいと思っているというようなことを、地面にカリフォルニア半島の地図を描きながら話してくれた。
私は分からないながらも、YES、YESを連発していた。


ようやく雨が止んだので、10時半に別れを告げて私は出艇。

二人は手を振って見送ってくれた。
彼女は今日天気が悪い中また、テントだと寂しそうに言った。
まったく人の目がない海辺で、外国人のカップルがテントに入っているというのも不思議な光景だった。



漕ぎ出すと、田辺湾内なのに、結構波がある。
湾の海岸線の岩場ではところどころで噴水のように高く水しぶきが上がっている。
こんなの初めてだ。高いのは10mを越えているだろう。凄まじい波の力だ。


湾から出て目津崎を超えようとしたが、岩礁が点々と沖まで連なっていた。
その間を横切るのは勇気が要る。遠巻きにしようと沖へ漕ぎ出すが、岩礁はまだ沖に延びている
(後で5万1の地勢図を見ると、 kmぐらい沖まで岩礁があった。こういうトコロをちゃんと見ておく必要があったのだ。この波の中では、目の前にある地図を見る余裕はなかった。)

沖合を岸に平行に漕ぐ。そのうち、波高が5m?を越えた。
艇が何回か宙に浮き、海面にたたき落とされる。恐くなった。

自然に陸地方向に艇を向けていた。
海岸が目的地のJR岩代駅前のように見えてしまった。
似た感じだが、ココは岩礁のある千里浜の方だった。岩代はまだ先だ。
(1年前に撮った両方の浜の写真が先のレポートに載っている。)

艇は波に乗って高速で岸に向かう。前方に岩礁が見えた。
なんとか避けたが、ランディングの準備時間はない。
波に乗ったまま浜に押し上げられた。

艇を確保しようとするも、波に引かれる力には抗しようがない。
水中で何回か捕獲を試みるも、ついに諦めて、艇を放し、我が身だけで上陸した。

暫し浜にへたり込んで見ていると、艇は左に流されて岩礁に捕まった。かわいそうに痛いだろうな。

その日は近くの南部ダイワロイヤルに宿をとり、翌朝、艇を回収した。
愛艇は相当砂を飲み、骨折していたが、入院、再生できた。