交野ヶ原の四季

   − 春の部 −


  1景  梅の香や空の青きに吸い込まれ

           

    春まだ寒い中、傍示(ホウジ)の里ハイキングコースの急な坂道(高低差200m)を漕ぎ登るのは心楽しいことである。
    (大阪府)交野市と(奈良県)生駒市との境界にある山里「傍示」の梅を訪ねるのである。
    梅林があるわけでもないが、かいがけの道の峠にある昔からのこの里の梅の風情が好きなのだ。


  2景  風光る 芝生に乙女 舞ひにけり

      

  私の天野川サイクリングロードの最下流部(藤田川との合流部)に河川敷公園が整備されて、芝生がきれいにはえそろってきた。
  その芝生をマットに仲良しの少女が二人、新体操のごとく舞っていて、怪しげなオッさんのカメラの注文に快く応じてくれた。
  次の土曜日の同じ時刻に、ここで写真を手渡す約束をした。



   − 夏の部 −

  1景  植えられし 夕刻 早苗 光りおり

      

    天野川サイクリングロードへの自宅からのアクセスの最後のところは農道で、道の両側は田圃である。
    5月の最後の日曜日の夕方、兼業農家が植えられたばかりの早苗に夕陽に光っていた。

   夏ツバメ田圃に走る影速し
    1ヶ月も経って梅雨時になると苗はぐんぐんと茂り出す。ツバメが餌を求めて田圃の上を低空飛行する。
    まだ半分くらい見える水面にその影が映っていた。


  2景  梅雨の晴れ 濁りて太き 源氏滝

       灯を点し 塩撒き 修験 滝の中


               

    交野山麓コースの中ほどにある源氏の滝。鬱蒼として昼間でもうす暗い。
    昔から何千人いや何万人以上もの修験者がこの滝に打たれて修行を重ねてきた。
    その行は今でも続いている。梅雨の晴れ間に見に行くと、滝の水量は豊富だが、濁っていた。


  3景  乙女らは ひょいと茅の輪を くぐり抜け
               
    織姫様を祭っている倉治の機物(ハタモノ)神社の本殿の前に茅の輪がしつらえてあった。
    神妙な顔つきで目をつぶってくぐる者もあれば、友達同士が談笑しながらくぐる姿もあった。
    夏を迎えた乙女たちは何を願って、茅の輪をくぐったのであろうか?



  4景  川沿いの不法菜園 ナスの花

            

    天野川に沿って走る。向こうの田圃の手前に天野川の支流の小川が流れていて、その間の狭い土地も河川の区域らしい。
    「公告」立て札がそれを告げているが、野菜の主は素知らぬ顔だ。

    写真の右手前には菊。その向こうにナス。左にキュウリ。その奥にゴーヤ。トマトも実りだしているなぁ。



  5景  風の音 みどりの音に 水の音

        

    夏は暑いので夕刻、日陰を走ることが多い。
    自宅から南方向に天野川沿いに走って、月の輪の滝ハイキングコースの岩道の手前までのルートは特にお気に入りだ。
    (A.天野川・お散歩コースF.月の輪の滝・森林浴コース
    西日を遮ってくれる住宅があって、それが川沿いの緑道の木々に変わり、最後は森林だ。
    上の写真はその終着点で、山の風が吹き、緑が夕陽に映えて、尺治川(天野川の支流)の流れの音が涼しい。



   − 秋の部 −

  1景  星祭り 大人びて見ゆ 子らの顔
          
    機物神社の七夕祭はさすが大賑わいである。参道には露店が並び、子供たちの目が輝く。
    本殿の鳥居前に進むと、10数本の大きな七夕竹が横たわっている。
    短冊を買ってもらってボールペンを持ち、願いごとを考え考え書いていく。
    短冊が十分に付けられた竹から順に起こされて、天に向かう。



  2景  畦道に枝豆の花 薄ピンク
       
        天野川サイクリングロードからの帰りは畦道を通るのが好きだ。山田神社の下の畦道には、田植えの後に枝豆の小さな苗が
        ぎっしりと植えられていた。こうすると、田圃の養分を吸って枝豆が元気に育つらしい。
        先日、稲より背が高くなった枝豆に薄ピンク色の小さな花を見つけた。
        多分9月にはこの枝豆が、無人販売で100円玉で買えるようになるのだろう。



   − 冬の部 −


  1景  翡翠(カワセミ)を見つけ自転車そっと止め
         
天野川のJR鉄橋の手前で、カワセミを見つけた。
背中が光沢のあるコバルトブルーだ。
コンクリートブロック擁壁の中段の犬走りの先端に立って水面を見ている。
自転車をそっと止めて、シャッターを押した。

直後、急に飛び立ち、川面に向かって真下に落ちるように突っ込んだ。
多分、魚を捕まえたのだろう、サァーと上がっていった。

翡翠という名前を誰が付けたのか知らないけれど、まさに「飛ぶ宝石」だ。
俳句の世界では、夏の季語になっている。
確かに川辺が青く生い茂っている時期の方が「宝石」に見えるだろうナ。





  2景  本殿の裏に日が射し 寒椿

              

      天田神社の本殿の裏で寒椿を見つけた。
      この写真の中央部左手、花の中に目白が写っているはずだが見分けられない。
      撮ってから目白が蜜を啄んでいるのに気がついた。
      天田(甘田)神社の椿だから、特別甘いのだろうな、懸命につついて花粉だらけになっていた。


  3景  葦枯れの光の中の子鴨かな

     

   天野川も冬になると、水際の葦などは枯れてしまい、河原は茶色になる。
   その代わり、鴨などの冬鳥が大勢やって来てくれ、バードウォッチングが楽しめる。
   マガモの雄は、頭部は緑色、胸は赤褐色。雌は全体に茶褐色。茶褐色の方をよく目にする。